(内容紹介)
夢で見た聴いたあのメロディ、あの言葉、あのサウンドを、現実(うつつ)の世界でつかまえられたら。
それが、すべての音楽家の見る夢。猪野秀史(INO hidefumi)にとって約2年半ぶりとなるニュー・アルバム 『In Dreams』から、
そんな願い事をチューニングするような音が真っ先に聴こえてきた。やがて夢とうつつを クロスオーバーしようとして、魂はジェット
ストリームに乗って大きく羽ばたいてゆく。 シンガー・ソングライターとしての猪野秀史は、行く先がいまだ見えない禍の時代に、
歌い、かなで、揺れるように 踊り、悩み、嘆き、うなされ、それでも夢の行く先を見たくて夢を見る。先行シングル「スコール」
「インドリームス」、小西康陽との競作曲「ブルースの定義」、20世紀の大作曲家ジョニー・マーサーが遺した「ドリーム」そして、
ビートルズの「グッドナイト」のカヴァーまで全10曲。 この傷ついた、愛すべき、素晴らしい世界のための、ファンタスティック・
ヴォヤージがまた始まる。松永良平(リズム&ペンシル)
(本人コメント)
夢の中にいるような現実が続いている。現実を夢のように感じ、夢をリアルに感じてしまう時もあったりする。
クリストファー・ウォーケンやデニス・ホッパーの出演してる映画を観た後、何となくデヴィッド・リンチの変態映画も鑑賞。
眠気がさして来た時に劇中からロイ・オービソンの狂甘美な曲が浮遊するように流れはじめ、部屋中を静かに満した。
現実と非現実の境目が溶け出し、夢の中にいるような感覚。
『IN DREAMS』というアルバムタイトルにしたのはその空気感と今の時代の空気感が奇妙にリンクしたのがきっかけだった。
いつも、自分のやりたい方向と世の中の音楽の方向が逆行しているようで気分爽快だ。
なぜゆえに時代の潮流に乗り たがるのか不思議
でならない。どうして音楽をやっているんですか?的なことを聞かれることがある。それは自分は音楽しかできなかったからです。
厳格な父、文武両道な兄、子供の頃から音楽は心のよりどころだった。
音楽や文化芸術は心のワクチンだ。 愛を込めてつくった。猪野秀史
INO hidefumi 「In Dreams」収録曲
01. 既聴感/ Déjà Vu (作詞・作曲:猪野秀史)
02. スコール/ Squall (作詞・作曲:猪野秀史)
03. 美しい夜/ It's Gonna Be A Beautiful Night ! (作詞・作曲:猪野秀史)
04. あるギャングの肖像/ Portrait Of A Gangster (作詞・作曲:猪野秀史)
05. ブルースの定義/ My Definition Of Blues (作詞:小西康陽・作曲:猪野秀史)
06.インドリームス/ In Dreams (作詞・作曲:猪野秀史)
07. マグネティックダンス/ Magnetic Dance (作詞・作曲:猪野秀史)
08. ドリーム/ Dream (作詞・作曲: Johnny Mercer 編曲:猪野秀史)
09. 永遠的スローモーション/ Eternal Slowmotion (作詞・作曲:猪野秀史)
10. グッドナイト/ Good Night (作詞・作曲: Lennon-McCartney 編曲:猪野秀史)
初回限定 Tシャツ付 CD ( Lサイズ )
Price : ¥5,300 (¥5,830 税込)
■INO hidefumi THE SESSION vol.4 featuring 高野寛 at Rittor Base
ライヴレポート
1曲目は、細野晴臣の名曲「終りの季節」だった。ホストの猪野秀史もゲストの高野寛も、特に何かをMCで説明するでもない。
この曲を高野は2013年10月リリースのカヴァー・アルバム『TOKIO COVERS』でとりあげているし、もちろん猪野も大好きな曲だからこその
1曲目なのだろうけど、二人が感じている共通言語のような感覚はなんとなくわかる。それは、“シティ・ポップ”という言葉が生まれる以前、
まず1970年代の半ばに“シティ・ミュージック”という呼称があった頃、海外からの影響をめいっぱい受けながらも、好きな音楽を自分たちの肌感覚へ
フィットさせる方法を若者たちが真剣に探っていた時代の手触り。この夜の隠しテーマはそれかもしれないと予感させる最高の幕開けだった。
そもそも、セッションというかたちでお互いの引き出しを開け合うことはプロフェッショナリズムのなかにアマチュアリズム的な楽しみを
見出す方法でもある。2曲目に演奏された「(それは)Music」(高野寛『TRIO』/2014年8月)で、高野は終盤の歌詞を「これが新しいセッションの
ミュージック」と変えて歌った。即興で出た言葉だとしても、それが正直な手応えであり喜びの表現だったのだろう。
「each other」(高野寛『Rainbow Magic』/2009年10月)を歌い終えて、リズム・セクション(伊賀航+北山ゆう子)を「リンゴとポールが憑依した
ようなプレイ」と称賛したのも印象深い。実際、「each other」の曲調のせいもあって、ビートルズが1969年に行っていた〈ゲット・バック・セッションの
いいムードの日の演奏を聴いているような錯覚をぼくも覚えていたから。
いっぽう、猪野は、ポップさに隠された高野の“はみ出していく力”を引き出そうとする。
「ねむれない」(INO hidefumi『SONG ALBUM』/2018年10月)で高野が弾いたフリーキーさのあるギターソロを「アンヴィシャス・ラヴァーズの頃の
アート・リンゼイのよう」とたとえたのも、その一端だろう。そうした言葉のやりとりや演奏のミステイクも、セッションに有機的に作用していく。
それを無修正で受け取ることができるのも生配信ならではのおもしろさだ。
そんなおもしろさが最初の頂点に達したのが、この日のために用意されたカヴァー「レディス&ヂェントルマン&おとっさん・おっかさん(ユー・
ビロング・トゥ・ミー)」だ。昭和30年代に一世を風靡したコメディアン、トニー谷が、アメリカのスタンダード曲として知られる「You Belong To Me」を
大胆な日本語歌詞を交えてカヴァーした1曲。破天荒な歌詞で生まれ変わったこの曲を、猪野はさらにファンキーにリメイク。
最新シングル「IN DREAMS」のカップリング曲「MAGNETIC DANCE」にも通じる、笑えてもなおかっこいい今のINO hidefumiのモードが伝わってきた。
また、猪野はMCでは言及はしなかったが、おそらくこの曲を知ったきっかけは世代的に見て大滝詠一が監修したトニー谷のベスト盤『THIS IS MR.TONY TANI』(1987年)を通じてだろう。いっぽう、高野は原曲の「You Belong To Me」を山下達郎のア・カペラ・アルバム『ON THE STREET CORNER』(1980年12月)でのカヴァーを通じて知ったという。同じ曲をカヴァーしている二人の背後で大滝詠一と山下達郎が交錯していたと妄想してしまった。
セッションは後半に入り、この日の“第一のヤマ”と評されていたテクニカルなインスト曲「Salsa de Surf」(高野寛『A-UN(あ・うん)』/2018年2月)。
もともとアコーディオン奏者cobaから「サーフミュージックをサルサでやってほしい」とのリクエストで高野が書いた楽曲のセルフカヴァー版。
この日の演奏はギタリスト高野寛のえぐみが存分に出た凄まじいもの。ため息が出るほどかっこよかった。
そして“第ニのヤマ”は、伊藤銀次「こぬか雨」のカヴァー。それをこの日は、シュガー・ベイブによる未発表ライヴ・ヴァージョンを元にして演奏するのだという。若い頃に組んでいたバンドですでにそのカヴァーを猪野はやっていたという。過去の自分も一緒に連れてこの場にいることは決してうしろ向きなことじゃない。見ているのは、そのときも今も好きな音楽を好きだと言い続けているからこそ出会える未来だ。
演奏を終えて「100点!」(猪野)、「楽しいね!」(高野)とふたりから声が出たのが、その自然な証明だ。
ラスト2曲で、当日の朝にSNSでの書き込みがきっかけで急遽飛び入りが決まったゴンドウトモヒコがフリューゲルホルンで参加。
ふくよかな厚みを増したアンサンブルで、小坂忠「ほうろう」のカヴァー、そして最後に高野の「夢の中で会えるでしょう」(1994年10月)へ。
この先もぼくらが音楽を好きで居続けられるなら、また夢の中で、そしてやがてはきっと現実でも会えるでしょう。
たぶん、その悦楽とスリルは50年前の1970年代も、コロナ禍の今現在も、もしかしたら50年後もそんなに変わらないのかも。
自分たちらしく、憧れのありかを見つけ出すことが楽しい。その快感原則は変わらないんだから。つくづくそう思えた特別な一夜だった。
松永良平(リズム&ペンシル)
アーカイブは2021年3月31日23時まで視聴可能)
・ストリーミング視聴券・Tシャツ付ストリーミング視聴券
■INO hidefumi THE SESSION vol.4 featuring 高野寛 at Rittor Base
フェンダーローズの名手として知られるキーボーディストINO hidefumi(猪野秀史)がホストとなり、御茶ノ水 RITTOR BASEから行う
配信ライブシリーズ=“INO hidefumi THE SESSION”。ハマ・オカモト(OKAMOTO’S)、鈴木茂、そしてゴンドウトモヒコに続き、今回は
ゲストに高野寛を招き3月25日に開催します!
シンガー・ソングライターとしてソロ活動をしているだけでなく、ギタリストとしてもYMOやTEI TOWA、宮沢和史、星野源をはじめと
した多くのアーティストのライブや録音に参加するなど、日本の音楽シーンで確固たる地位を築いてきた高野。そんな彼が初顔合わせと
なるINOと一緒に、それぞれの持ち曲や意外なカバー曲を、ここでしか聴けないアレンジで披露します。
サポートは細野晴臣バンドでベース(!)を担当している伊賀航、そしてキセルでのシュアーなドラムで知られる北山ゆう子を加えた万全の
布陣。定評あるRITTOR BASEの映像・音響システムを生かした極上のストリーミング配信で、ミュージシャンそれぞれの息遣いまで存分
に感じられる内容となるでしょう。
また、高野が撮影した写真をもとにINOがデザインしたコラボTシャツ付視聴券も販売します。
<INO hidefumi THE SESSION vol.4 featuring 高野寛>
開催日時:2021年3月25日 (木) 20:00- (演奏は1時間強を予定。アーカイブは2021年3月31日23時まで視聴可能)
ストリーミング視聴券:2,200円 チケット購入
Tシャツ付ストリーミング視聴券:5,500円 チケット購入
■TOWA TEI ニューアルバム「LP」に参加させていただきました。
Deee-Liteのメンバーでデビューして30周年!2017年リリースされた
アルバム『EMO』から4年ぶり、キャリア通算10枚目となるオリジナル
アルバムが完成!アルバムからの先行シングル(7インチアナログ)
「MAGIC」、「BIRTHDAY」も収録された全10曲収録。
今作には、細野晴臣 高橋幸宏 HANA 清水靖晃 砂原良徳 伊賀航 森俊二
カシーフ 猪野秀史 他、豪華ゲストが参加!
室内でも屋外でも気分が上がって心踊れる極上のトラックが満載。
■INO hidefumi THE SESSION vol.3 featuring ゴンドウトモヒコ Live Report
*ライブアーカイブは1月28日まで!
猪野秀史が毎回ゲスト・プレイヤーを迎えてRittor Baseで行う生セッション配信〈INO hidefumi THE SESSION〉のVol.3。
猪野の入院による延期を経ての第3回は、自身が参加するバンド、anonymous、METAFIVEや、数々のレコーディングやライヴに関わるマルチプレイヤー、
ゴンドウトモヒコを迎えて行われた。
共通の知り合いは多いというふたりだが、こうしてセッションのホストとゲストとして顔を合わせて演奏するのは初めてだったという。
セッションは、ゴンドウトモヒコがコロナ禍のなかで作った新曲〈Home Stay Home〉で始まった。猪野、伊賀航、北山ゆう子、
そしてゴンドウが向かい合うように陣取ったスタジオの映像は、なんとなく広い宇宙空間のようで、孤独でストイックなムードにも思えるものだった。
猪野の「目からうろこ」「魔法」、ゴンドウの「Idylica」「Awkward Dance」と、お互いのレパートリーを2曲ずつ。目の病気で入院していた猪野が退院して最初に披露した自分の曲が「目からうろこ」というのは洒落てる。「Idylica」は、ゴンドウが“中学の時に書いた”曲で、「Awkward Dance」は五拍子の難曲。しかし、演奏自体には研ぎ澄まされた緊張感があるのだが、ゴンドウの吹くフリューゲルホルンが加わることで、独特のふくらみが生まれる。
息を吹き込んで鳴らす楽器である管楽器の特質ではあるのだろうが、ゴンドウが好んで吹くフリューゲルホルンやユーフォニアムには、鋭く切り込んでくるというより、空間をふわっと広げてゆくような感触があった。
お互いに手の内を少しずつ見せ合ったあと、この日のハイライト的なシーンであった高橋幸宏楽曲のカヴァーへ。
去年(20年)の8月に病気で入院し、現在は快方へと向かっている高橋の楽曲から一曲ずつが選ばれた。Yellow Magic Orchestra、METAFIVE、pupaで高橋と
ともに活動してきたゴンドウは、YMOの「CUE」を。イントロで自らディジュリドゥを吹き、自らヴォーカルをとった。
初めて聴いたゴンドウの歌声はとてもまっすぐで不器用で、心なしか自然と震えているようなニュアンスが“幸宏声”の系譜だと思えた。
MCで先に紹介することもなく、「CUE」からそのまま猪野のチョイスへと演奏は進む。高速サンバ・アレンジのイントロにはひそかに「ライディーン」のコード進行が隠れているようにも感じたが、歌が始まると「Saravah!」だとわかった。性格や表現は違っても、ふたりからシンガーとしての高橋幸宏への
リスペクトが感じられた時間だった。ゴンドウは“配信アドレスは(幸宏さんに)伝えてある”と言っていたので、もしかしたら本人も見ていたかもしれない。見たらきっと喜ぶんじゃないか。
そこからライヴも終盤へ。やはりコロナ禍に生まれた曲だというゴンドウの「Tuning Pressure」。“同調圧力”という意味だが、猪野が指摘したようにYMOの
ライヴ盤『Public Plessure』も彷彿とさせるタイトルにも受け取れた。続く猪野の「犬の散歩」には、普段通りの生活をしようとしても不安がつきまとうこの時代と接している部分がアルバムで聴いたときより増したような印象を受けた。歌声の力強さも含め胸に届いた言葉に、ハッと我に返ったのはぼくだけではないだろう。
そしてラストはナット・キング・コールやファッツ・ドミノ、高田渡らの名演名唱でおなじみ「私の青空」。グッとニューオリンズの街場に寄せたアレンジでエンディング。孤独な宇宙空間だと思っていたスタジオは、いつの間にかにぎわう南部の街になっていた。
そういえば、MCタイムで猪野が中心となって続くやりとりを、ゴンドウはいつもこんなに長いのかと苦笑していたが、あの井戸端会議みたいな時間は絶妙にクセになる。いつしかそのペースに誰もが巻き込まれていた。演奏の緊張感とトークの弛緩は、猪野にとってON/OFFで分け隔てるものではなく地続きにあるものらしい。緻密に計算されたカメラワークと編集を経て完成された配信ライヴ映像をいくつも見慣れた目と耳には、この普段通りの感覚が新鮮だ。
音楽は稀有なのに、そこで息を吸って吐くように生まれる音楽が“普段”とつながっている。それはきっと、この日のライヴだけじゃなく、これからずっと必要なものだ。
まるで“宇宙の井戸端会議”に立ち合ってるみたいなあの感じ。次もまた味わいたい。
TEXT : 松永良平(リズム&ペンシル)
■ 2021年春にリリースが待たれるINO hidefumi3年振りのオルタナティヴAOR。
新作「うた」のニュー・アルバムからシングル・カットとして、1/16(土)に7inch Vinyl盤と
デジダル配信でのリリースが決定しました!
■ 2021年春にリリースが待たれるINO hidefumi3年振りのオルタナティヴAOR。
新作「うた」のニュー・アルバムからシングル・カットとして、1/16(土)に7inch Vinyl盤のリリースが決定しました!
心は揺れ、体は揺らされ。おぼつかない照準で、混沌とした世界に向けて一閃。
2021年最初のINO hidefumiニューシングル「IN DREAMS」は、そんなイントロで幕を開ける。
20年2月に7インチで限定リリースされた「スコール / 永遠的スローモーション」から約一年ぶりのフィジカルリリース。
待望のニュー・アルバムからの先行トラックでもある。
ずっと続くと思えた日常が断ち切られた2020年。INO hidefumiが考え続けた、この世界の歩き方、鳴らし方がここにある。
体や行動ががんじがらめにされても、音楽で心を動かし、音楽で扉を開け、夢のなかで行きたい場所に行けばいい。
その自由なグルーヴが聴こえたら、きっと室内も脳内もこの世界までもが鮮やかに反転してゆくはず。
そして、微熱に浮かされたままレコードを裏返せば、B面の『MAGNETIC DANCE』で「えらいこっちゃ」と、
置き去りにされていた魂も慌ててやって来て、一緒に踊り出すだろう。松永良平(リズム&ペンシル)
INO hidefumi 新曲7インチシングル、イノセントレコードより発売決定!
予約受付中→ https://diskunion.net/clubt/ct/detail/1008233488
・ リリース:2021年1月16日(土) 配信 / フィジカル同時リリース
・ A面:インドリームス / B面:マグネティックダンス
・ 作詞 / 曲 : 猪野 秀史
・ レーベル : イノセントレコード(irep-013)
・ 流通 : ディスクユニオン
・ 形式 / 価格 : 7インチレコード / ¥1,400+税
・ Release:2021. 01.16(Sat.)
・ Side A:IN DREAMS / Side B:MAGNETIC DANCE
・ Words and Music : INO hidefumi
・ Labe : innocent record (irep-013)
・ Distributed by DISC UNION
・ Format / Price : 7inch Vinyl / ¥1,400+tax